Javaのthisって何?その全てを解説!|インナークラスでのthisの使い方を知ろう

- SE
- Javaのthisというキーワードは必要なのでしょうか。
- PM
- それほど頻繁に使用するわけではありませんが、いざという時にとても役に立ちます。
Javaのthisとは?
Javaにはthisというキーワードがあります。それほど頻繁に使用するわけではありませんが、いざという時にとても役に立ちます。なおthisを理解するには、まずインスタンスと言う概念を知っておく必要があります。
Javaにおけるインスタンスとは、newで生成されるクラスの実体です。抽象的に感じてしまいわかりにくいかもしれませんが、まずは以下の実例を見てください。
class TestClass {
public int field;
public TestClass(int field) {
this.field = field;
}
public void dispValue() {
int field = 10;
System.out.println(field);
System.out.println(this.field);
}
public TestClass getThis() {
return this;
}
}
public class MainClass {
public static void main(String[] args) {
TestClass c = new TestClass(100);
c.dispValue();
}
}
newとstaticの関係
上のJavaサンプルで、mainメソッドでnew TestClassで生成した変数cが、TestClassのインスタンスの参照です。TestClassの宣言はその上にありますが、このクラスに含まれるfieldやdispValueメソッドはインスタンスに属します。そのためdispValueはc.dispValue()のようにcと紐づけしないと呼び出せません。
一方、MainClassのmainメソッドはMainClassのインスタンスには属しません。なぜならmainにstaticとついているからです。staticが付いている場合は、newせずに使えます。このような非インスタンスなメソッドは静的メソッドと言われます。
thisが自分自身のインスタンスを意味する
インスタンスや静的について良くわからなくても、とにかく「classのメソッドはstaticじゃなければnewしないと使えない」とだけ理解しておけば、とりあえずは大丈夫です。インスタンスについてはそのくらいにして、本題のthisに入りましょう。
Javaのthisというキーワードは、「自分自身のインスタンス」を意味します。
上のmainメソッドを以下のように変えて実行してみましょう。
public static void main(String[] args) {
TestClass c = new TestClass(100);
TestClass d = c.getThis();
System.out.println(d.field);
}
thisを返すのは自分自身を返すということ
変更したmainメソッドでは、cのgetThisメソッドを呼び出しています。getThisの中ではthisを返していて、それをdで受け取っています。そしてdのfieldを表示しています。実行すると結果は、
100
となります。生成時にコンストラクタに渡した値と同じです。TestClassのgetThisではthisで自分自身のインスタンスを返すので、それを受け取ったdもcと同じインスタンスを参照していることがわかりますね。
thisは同名フィールドの競合を解決するために使う
thisの別な使い方を説明します。JavaサンプルのTestClassのコンストラクタを見てください。なおコンストラクタとは、newした時に呼ばれるクラス名と同名のメソッドです。
public TestClass(int field) {
this.field = field;
}
この場合のthis.fieldは、このTestClassのメンバーのfieldのことです。thisが付いてないfieldはこのコンストラクタのパラメータのint fieldのことです。コンストラクタではこのようにパラメータとクラスのフィールドを同名にすることが多いので、thisが必要になるのです。
thisでローカルフィールドとの同名の競合を解決する
もう一つのthisの使い方ですが、JavaサンプルのdispValueメソッドを見てください。
public void dispValue() {
int field = 10;
System.out.println(field);
System.out.println(this.field);
}
ここではint fieldというローカルフィールドが、このクラスのフィールドのfieldと同名になっています。こうした時にはthisで区別できます。mainメソッドを以下のようにして実行してみましょう。
public static void main(String[] args) {
TestClass c = new TestClass(100);
c.dispValue();
}
パラメータとローカルフィールドの同名は不可
上のJavaサンプルを実行すると、
10
100
と表示されます。thisが付いてないfieldはローカルフィールド、thisが付いているとクラスのフィールドを示すということです。
では、以下のようにさらにfieldというパラメータを追加したらどうなるのでしょうか。
public void dispValue(int field) {
int field = 10;
System.out.println(field);
System.out.println(this.field);
}
結果はエラーになります。Javaではメソッドのパラメータとローカルフィールドは同じ名前を使うことはできません。
this()でコンストラクタから他のコンストラクタを呼べる
Javaのthisにはもう一つ、this()というキーワードがあります。これの使い方については、以下のサンプルを見てください。
class TestClass {
public int field;
public TestClass() {
// コンストラクタで必要な処理を行う
}
public TestClass(int field) {
this();
this.field = field;
}
}
this()はコンストラクタから他のコンストラクタを呼び出す時に使えます。this()をTestClass()に変更するとエラーになります。またthis()の位置はコンストラクタの先頭でなければならないというルールがあります。
thisはパラメータも持てる
以下のようにthis()にパラメータを持たせることもできます。
class TestClass {
public int field;
public TestClass() {
this(100); // デフォルト値は100
}
public TestClass(int field) {
this.field = field;
// コンストラクタで必要な処理を行う
}
}
this()を使えばコンストラクタの処理を共通化して、様々なパラメータを持つコンストラクタを作ることができますね。
インナークラスでのthisの使い方
Javaにはインナークラスという内部クラスを持てる機能がありますが、thisは外部クラスと内部クラスの名前の競合を解決することができます。
以下のサンプルをご覧ください。
class TestClass {
public int field = 100;
class InnerTestClass {
public int field = 200;
public void dispValue() {
System.out.println(field);
System.out.println(this.field);
System.out.println(TestClass.this.field);
}
}
}
public class MainClass {
public static void main(String[] args) {
TestClass c = new TestClass();
TestClass.InnerTestClass d = c.new InnerTestClass();
d.dispValue();
}
}
「クラス名.this.フィールド名」で外部クラスのフィールドを指定できる
上のサンプルを実行すると、
200
200
100
と表示されます。内部クラスでfieldとすると内部クラスのフィールド、this.fieldとしても内部クラスのフィールド、TestClass.this.fieldとした時に外部クラスのフィールドになっています。
このように「クラス名.this.フィールド名」で内部クラスから外部クラスのフィールドにアクセスできるのです。
- SE
- Javeのthisの必要性や使い方がよく分かりました。
- PM
- 同名のフィールドの競合を解決するためにも覚えておきましょう。
thisを使うことで同名のフィールドの競合を解決できる
Javaのthisについて説明しましたがご理解頂けましたでしょうか。
this、this()、クラス名.thisの3つを紹介しましたが、使い方を忘れてしまったときなど、またこの記事を読んで思い出してください。