オブジェクト指向とは?クラス・オブジェクト・継承・カプセル化・ポリモーフィズム

この記事でわかること
オブジェクト指向とは?
オブジェクト指向について解説いたします。まずはオブジェクト指向がプログラミングパラダイムの一つであることを説明いたします。
その次に、オブジェクト指向を学ぶ上で重要な概念であるクラスとオブジェクトというコード表現について説明いたします。
最後にクラスとオブジェクトを使った設計・開発で重要な継承・カプセル化・ポリモーフィズムという概念について具体例を交えながら解説いたします。
オブジェクト指向はプログラミングパラダイムの一つ
オブジェクト指向(Object Oriented Programming)とはプログラミングパラダイムの一つです。プログラミングパラダイムとは、プログラム開発における考え方や方法論のことを指します。
プログラミングパラダイムごとにベースとなる概念があり、その概念に基づいたコード記述が存在します。
オブジェクト指向のほかに代表的なプログラミングパラダイムとして構造化プログラミングや関数型プログラミングなどが存在します。
C#はオブジェクト指向言語
オブジェクト指向の考え方を取り入れたプログラミング言語としてはC#言語やJava言語などが挙げられます。これらにはオブジェクト指向の重要な概念であるクラスやオブジェクト、継承といった機能が提供されています。
そのため、C#やJavaなどのオブジェクト指向言語を使った設計や開発の際にはオブジェクト指向の概念を理解する必要があります。
オブジェクト指向とは
本題であるオブジェクト指向とは何かについて説明していきます。オブジェクト指向とは大まかにクラスとオブジェクトの概念に基づいたプログラミングパラダイムです。
クラスとオブジェクトとは現実に存在するものをコードで表現するための概念です。それぞれについて詳しく掘り下げていきます。
クラスとフィールド
クラスは抽象的な概念を指し、オブジェクトは具体的な概念を指します。飲み物に喩えるならば、飲み物がクラスであり、コカ・コーラやファンタといった具体がオブジェクトに相当します。
クラスはいわば、オブジェクトを総称する上位概念といえます。クラスは総称のほか、属性値などを持たすことができます。
飲み物というクラスであれば、内容量や価格といった情報を属性値として表現することができます。この属性値のことをC#をはじめとするオブジェクト指向言語ではフィールドと呼びます。また、オブジェクトを操作するためのコードをメソッドといいます。
C#で表現すると以下のようになります。
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class Drink { // オブジェクトに持たせたい値をフィールドと呼ぶ private string name; private int volume; // オブジェクトを操作する手段をメソッドと呼ぶ public string getName(){ return name; } public string getVolume(){ return volume; } // オブジェクト生成するためのおまじないをコンストラクタと呼ぶ public Drink(string name, int volume){ this.name = name: this.volume = volume; } } |
オブジェクト
一方でオブジェクトはクラスで定義された属性値を持った具体といえます。飲み物というクラスが定義されていた場合、500mlペットボトルのコカ・コーラや缶のファンタといった具体的な値を表現することができます。
C#で表現すると以下のようになります。
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// Drinkクラスからcolaオブジェクトを作成する Drink cola = new Drink("coca cola", 500); cola.getName(); // メソッドを実行することでcoca colaという値が得られる |
クラスとオブジェクトという表現のメリット
抽象的な表現と具体的な表現を分けるメリットとしては、コードの再利用性を高めるという点にあります。
飲み物クラスという表現をせずに、コーラとファンタをC#のコードで表現すると以下のようになります。
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private string colaName = "coca cola"; private int colaVolume = 500; private string fantaName = "fanta grape"; private int fantaVolume = 500; |
上記はフィールドが商品名と内容量しかないためそれほど煩雑には見えませんが、価格や販売元などといった情報を追加したいときに拡張性に欠けてしまいます。また、拡張すればするほどコードが煩雑になってしまいます。
そのためクラスとオブジェクトによる表現で実装することでコードを大幅に削減でき、整理することができます。
オブジェクト指向を構成する3つの要素
ここまでオブジェクト指向とはなにか、そしてクラスとオブジェクトというコード表現の概念について説明いたしました。
次に、クラスとオブジェクトの再利用性や拡張性の側面について重要な3つの概念についてC#の実例を交えつつ掘り下げていきます。
継承
まず1点目は継承と呼ばれる概念です。継承とは、別のクラスを踏襲したクラスを作ることを指します。継承の特徴としては、継承元のフィールドやプロパティ、メソッドを引き継ぐことができます。
複数のクラスで共通して実装したいメソッドやフィールドを使いまわすことができます。
アルコール飲料クラスとエナジードリンククラスを作りたいとします。どちらも飲み物というより抽象度の高い概念を持っており、内容量といった共通点を多く持っています。
そこで、飲み物クラスというものを予め実装し継承させることで、内容量や名前といった共通点を使いまわすことができます。
共通項は継承で使いまわし、アルコール度数やカフェイン量といった共通しないフィールドはそれぞれのクラスに実装すれば良いというわけです。C#で表現すると以下のようになります。
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class Drink { private string name; private int volume; } // Drinkクラスを継承することでnameやvolumeフィールドを持つことができる class Alcohol : Drink { // アルコール飲料特有のアルコール度数はAlcoholクラスにのみ実装する private int alcoholContent; } |
カプセル化
2点目はカプセル化と呼ばれる概念です。公開または隠匿するデータをクラスで定義することでカプセルのように保護するという概念になります。
メリットとしては、オブジェクトのデータを勝手に書き換わらないように保護する点にあります。飲み物クラスから生成したファンタオブジェクトの名前がコカ・コーラに勝手に書き換わらいようにすることができます。
Drinkクラスのデータは内容量を変更してもよいが、商品名を書き換えたくない場合は以下のように実装することで実現できます。データが不変であると定義し、なおかつ操作できるメソッドを絞ることでコード上のバグを生みづらくすることができるというところがポイントです。
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class Drink { // private修飾子により外部から操作されない private string name; private int volume; // メソッドから値を取得する public string getName(){ return name; } // メソッドから値を取得する public int getVolue(){ return volume; } // メソッドから値をセットする public void setVolume(int volume){ this.volume = volume; } } |
ポリモーフィズム
3点目はポリモーフィズムです。日本語で多様性や多相性という意味です。同じメソッド名でクラスごとに異なる振る舞いを持たせることができる機能です。
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class People { public virtual string sayHello(){ return "hello"; } } class Japanese : People { // override修飾子をつけることで継承元クラスのメソッドを上書きできる // メソッド名や返り値のクラスは変更できない public override string sayHello(){ return "こんにちは"; } } class Chinese : People { public override string sayHello(){ return "你好"; } } |
JapaneseクラスとChineseクラスで異なる振る舞いを持たせつつも、継承元のPeopleと同様のsayHelloメソッドで呼び出すことができ、簡潔に表現をすることができます。
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People[] people = new People[]{ new Japanese(), new Chinese() }; // 継承メソッドであるsayHelloで呼び出せる foreach (People p in people){ Console.WriteLine(p.sayHello); } |
オブジェクト指向まとめ
オブジェクト指向について解説いたしました。オブジェクト指向はプログラミングパラダイムの一つで、コードを書くための方法論であるということを説明いたしました。C#やJavaはオブジェクト指向言語と呼ばれ、オブジェクト指向に倣ったコーディングが前提であることを紹介いたしました。
オブジェクト指向はクラスとオブジェクトという概念で現実のものをコード上で表現します。また、このクラスとオブジェクトを設計・実装するにあたって、継承、カプセル化、ポリモーフィズムという3つの概念が重要であるということを説明いたしました。